2012年1月25日水曜日

自然園物語集 メタセコイアのお母さんの話(その2)

メタセコイアの森の中
人の祖先の食べ物は
ほとんど何も ありません

かつて栄えた恐竜は
好んで芽や枝 食べたのですが
皆んな 大地に眠りにつくと
誰もこの木は食べません


メタセコイアの母さんは
他の植物を なるべく生やさぬように
いつも 見張って気をつけたので
下は 開けて 見渡せました

人の祖先は 樹の上暮らし
目玉キョキョロ 子どもたち


















あるとき メタセコイアの大木の
下を流れる小川の浅瀬

魚たちが 喜び 飛んで 遊んでいるを
目の利く子どもが見つけます

皆んなで 木から降り降り 魚をつかみ
メタセコイアの母さんに
魚の話をせがみます

(祖先は木の精を通じて他の生き物のお話しを聞きました)

メタセコイアの母さんは 魚の話を伝えます

魚たちのやってきた
大きな広い海のこと

この流れの 果ての果て
川の集まる 行くその末に
大きな大きな しおみずの

海の中は あたたかで
魚や草で 満ち満ちて

人の祖先は おおよろこび
一族みんなで行きました 
川の流れを伝わって
どんどん下って 行きました


やがて着いた大海は
今よりもっと暖かで
みんな楽しく おおはしゃぎ
















ゆる暖かな 潮の中
魚や貝や海藻の
美味しい食べ物 溢れて満ちて

人の祖先が楽しく暮らした そのことは
今でも 夢の記憶に見るほどで


人の祖先は その間に
体の毛皮を脱ぎました
暖かな海の中
毛皮は泳ぐに 重すぎて

穏やかで 楽しい月日が幾万年

ところがある日
今度は 空から 鉄の星
重たい星が落ちました

















山は火を吐き 一瞬に
再び地上は寒い冬


メタセコイアの母さんが
悲しい唄をうたっても
優しい雪は降らなくて

水の星なら 雲涌いて
お話聞いてくれたでしょう
けれども今度は 鉄の星

唄を聞くのは風ばかり


海から 上がって 這ってきた
皮脱ぎ捨てた ハダカザル


裸のままでは寒いので
他のけものの 毛皮を借りて
なんとか それぞれ過ごします


人の祖先は 困り果て
風の中で唄います

メタセコイアの母さんも
嘆きの唄を聞きました 


「海の水が冷えきって
長く浸かって いられない
海のご馳走少なくなって
あるのは 固い海藻ばかり

ようやく岸から離れてみても
海の泳ぎにすっかりなれた
私の腕は 力なく 
高い木の上 登れない

海の陽射しが強すぎて
ようやく目の穴なれたなら
今度は闇夜に目も利かず

木には登れず 闇夜も恐い
こんな私は どうしたら」


メタセコイアの母さんは
人の祖先に枝葉を与え
囲んで住む家 教えます

他の木の精 憐れんで
端くれ与え 火の点け方を 伝えます

人の祖先のハダカザル
皆の知恵借り ほそぼそと
小さな群れで 逃げ隠れ

この冬に またたくさんの植物とけもの達
大地に眠っていきました

メタセコイアの母さんも
こんなうたを唄います

「私はもうダメ 水なくて 今度の世界は生きられぬ
もしも 願いが叶うなら 誰か私の赤ちゃんを
山の谷間に つれ運び
水辺の大地に ふりまいて

もしも そうしてくれたなら 
私は あなたと末永く
きっと 力になりましょう」

人の祖先は この唄聞いて言いました

「知恵を授ける木々たちの 生きるすべの大切な
教えをもらう ハダカザル
私が運んでいきましょう

ひとつところに とどまらぬ
私が あなたを運びましょう」

メタセコイアの母さんは喜び唄い
多くの種を産みました

「大きな陸の 奥深く
枯れた世界の離れには
谷間の奥の 水清く
ひっそり 種を置きましょう」

人が運んだその種の
メタセコイアの赤ちゃんは すぐに芽を出し
元気に育ち
谷間に沿って
しずかに時を越えました

2012年1月24日火曜日

自然園物語集 メタセコイアのお母さんの話(その1)

空から 水の星が落ちてきて
海と陸が一緒になった その時に

海にも陸にもたくさんあふれ住んでいた 大きな体の
牙ある者たちは みんな眠りにつきました


なぜなら 星が落ちて起こした地の揺れは 
たいそう大地を驚かせ 山の多くが血を流し
灰色吐息を出し続け 長い愚痴となったからです


山々の呻きと愚痴のそのせいで 寒い冬が訪れました

それまで知らない 暗く寒い冬

牙ある者たちは冬の仲間を持たないために 
風と大地の精にさとされて
みんな眠りにつきました

今から6500万年前のお話・・


メタセコイア族も 星が落ちたそのときに いきなり起きた 大風で 
たくさんほとんど倒されて
わずかに残った者たちで 小さな群れに 暮らします

けれども やっぱり困ったことに 寒くて寒くて どうしても
そのまま眠りにつくものが 星の数ほどありました

メタセコイアの母さんは たいそう悲しみ
こんな唄をうたいました

わたしが どれだけ たくさんの
命の種を 宿しても
みんな眠ってしまうだけ

起きてくる子が もういない
小さな私の赤ちゃんは
春のひざしの暖かな
あのひだまりまでは 待てないの

風に乗って唄は流れます
風が空高く舞い上がると 雲の精がその唄を聞きました

優しい雲の精は 悲しんで
しずくを落として 泣きました

しずくは寒い空を降りていくと
想い想いに形に変えて ゆっくりと地面に
おりました

たくさんたくさんおりました

すると しずくは雪となり
メタセコイアの赤ちゃん種を
優しくそっと包みます

冬の仲間がつくられて
こうしてメタセコイアの命の種は
春がめぐって来るまでは
雪の中で休みます

春の陽ざしが森を笑顔に変える時
赤ちゃん種は目を覚まし

ぐんぐん芽を出し
すぐに元気に育ちます

雪の布団に守られて
メタセコイアは 少しづつ
大きな森を 作れるように なりました


さて

ところで

その頃の 人の祖先のお話です


大きな牙ある者たちが ほとんど去った世界には
人の祖先も 住みました

モグラネズミのようなかっこうで 木の上高く生き延びて
サルの祖先でもありました


メタセコイアは その後 6400万年間
今から100万年前にまた大きな星が落ちてくるまで

仲間を増やし
人の祖先が 次々に 姿を変えてゆく
不思議な様を
奇跡の変化を 見ています